前回、「自己紹介」の回で「悪魔」ことブログ運営者の自己紹介をしたつもりではあるのですが、経歴と経営者を志したきっかけについて書きます。とはいえ、このブログは本人特定できない様に(と言っても特定できるほど有名ではありませんが)運営していきたいと思っておりますので、やんわりとぼかしながら書きます。
一つ、身の上話に移る前に自分の事を話すと、「何か世の中を変えたい、プロダクトを世の中に出したい」という思いがあって経営者になるタイプ、所謂ベンチャー・スタートアップの創業者はこれに当たりますが、私はそういうタイプではないです。何か自分が執着するビジネスモデルやアイデア、ましてや自分が他人より数段研究しているスペシャルな技術などがあるわけではないのですね。逆に、ある程度の得意分野はあれど業界やビジネスモデルに関しては不問で「経営という役割期待を全うする」という経営のスペシャリストになりたいと追求してきたタイプです。このタイプ、「プロ経営者」という存在とその受け皿がまだ未成熟な日本では特に転職市場においてステータスがかなり肩身が狭いです。「〇〇業界での経験○○年以上」とか「○○業界で○○人以上の組織をリードした経験○○年」とかいう条件を会社に出されると一発で「はねられる」わけですから・・・・。話が脇道にそれまくっているのでボヤキはこれくらいにしますが、経営者というものを語るうえで「転職」、特に「プロフェッショナル転職」は避けても通れないので、今後多くを語ることとなると思います。今回はこのくらいで留めて、昔の話に移ります。
目次-Table of Contents
ドラマは海外事業会社への出向から
前に書いたかと思いますが、新卒で入社したのは総合商社でした。10以上あるビジネスユニット(石油とか、化学品とか、鉄鋼とかの商材やサービスごとに一括りにされた「営業部隊」のこと)のうちの一つに配属され最初の3年程はその中で1つの商材の売買と商品お届けの為のロジスティクス周りを担当してました。経営者を志することになった契機はその当時の上長、つまり中間管理職の方が「新しく出資した先に若手派遣するぞ~!」と意気込んで組織目標の一つとして設定し、私に白羽の矢が立ち若手としてその出資先の会社に出向することとなりました。巨大商社の新規投資は半分以上は海外なのですが、その会社もご多分に漏れず海外で私も入社3年目で「海外投資先への赴任」と相成ったわけです。
和気あいあい?な出資比率の投資先
で、その会社は私が派遣されていた当初は①私がいた商社、②その商社と何件か一緒にJoint Ventureをやっている海外の会社、③この投資先の会社を設立したオーナー社長、の三者が株主でした。持ち分は均等ではなくともこの三者間である程度ばらけていて、「誰もが決定的主導権を持っていない状態」つまり私がいた商社にとっても「マイノリティ出資」に当たるものとなっていました。
そもそも、商社の事業投資と「商社マン」の役割
一つの案件の投資額が最低でも凡そ〇十億円の総合商社の投資はというのは殆どが海外事業案件で、出資比率は50%未満です。そして、基本海外の投資案件は誰か有力な現地法人のパートナー企業がより大きな持ち分でマジョリティの株主として居ます。そして投資先の社長はそのパートナーの現地の法人からの派遣か、その会社のサーチやリファラル、もしくは私の経験例の様に現地の創業者がなることが大半です。商社から派遣される人間は多くの投資先の場合1~2名で、一人は取締役クラスで通常「副社長」ポジションに就くことが多く、もう一人がいる場合は執行役員など、副社長よりも比較的現場に近いポジションに就きます。これら商社本体から派遣された出向者の方々のメインミッションは「株主のVOICEを伝える」です。それが商社の投資と商社から派遣された「副社長」(一応商社マン)の役割です。
事業会社に派遣された商社マンのお仕事は「経営」じゃないという話
前述の通り、商社から派遣の「副社長」の投資先での役割は「株主=商社のVOICEを伝える事」。よりかみ砕いていうと、商社の東京の本社の管理視座・管理メッシュを現地投資先にVOICEとして発する事、そしてその管理メッシュに即したKPIや業績などを本社に伝達すること、です。一方、この「副社長」は「経営する事」をミッションとして求められません。ここでいう「経営」とは「(東京からの視座・メッシュを基にしながら)目の前にある組織の状況に即した形で組織目標を設定し、目標に即した行動に落とし込み組織が目標を達成する様にリード・マネージしていくこと」に当たります。これは現地事業会社の「社長の仕事」。「商社マン副社長」が現地事業会社の組織の大きな部分をリード・マネージしている例は稀有です。つまり、一般化すると「商社マンは経営やりません・できません」ということになる悲しい事実があります。もちろん、例外もあります(そして私の経験も「例外」に当たります)。
一方、事業会社の社長、スタッフないし現地パートナー企業からは「商社の管理メッシュは細かすぎる」という指摘が入ることが多くあります。というより、事業会社に投資してこの指摘を受けないことはゼロなんではないかと思うくらいです。その理由は以下の二つではないかと推測されます。
①「経営のできない人(商社マン)とその組織(商社)」が求める管理メッシュ(KPI等)は網羅的に求めてしまう。一方でその管理メッシュも濃淡があるわけではないのっぺりとしたものである。「経営」が判らないので「勘所的に不要なモノ」まで含めるし、「何がクリティカルに影響するか」の濃淡の判断もできない訳です。そして、この管理メッシュのレポーティングに関しては親会社がかなり絶対的存在で、現場から「このKPIはこの事業の運営に意味ないよぉ~」とか言っても議論させてもらえないことが殆どです。事業会社から遠く距離のある商社本体の取締役が事業会社の管理メッシュについてガチで意識出来るほどお時間取って考えられているはずないのですが、商社本体の取締役の方々のお声は絶対的存在として管理メッシュに反映されたりします。
②商社から派遣される副社長とかの出向者の業務が「管理・報告業務」に偏重していること。仕事の世界では(でも)高揚感の無い仕事の依頼って受けが悪いんです。しかも、海外の地で現地語も大してできない日本の会社から来た人が、「管理の為に○○の指標を毎週報告する様に」なんて言った日には、それを求められた現地社員にとって商社マンは「自分の仕事を増やす、どっかの国から来た、現地語が出来ない人」でしかありません。「踊る大捜査線」の室井管理官しかり、「管理だけやっている人」って言うのは受けが悪いんです。少しでも会社が良くなる高揚感を創る役割をデモンストレート出来たら違うのですが、「自分が餅屋じゃないのに餅をついて会社がズタズタになる」のを恐れる商社マン、リスクマネジメントの果てに「嫌われ役」に終始するのが殆どです。ま、Mess upしない事は良い事なのですが、一方このスタンスでは「経営力」は上がりません。また、現地スタッフから「コマケーメッシュ押し付けてくる奴」という個人攻撃の対象になってしまいます。
悲しいかな、これが商社マンの「海外出資先事業会社」での立ち位置の一般像です。
悲劇の始まり
話を私の出向先に戻しまして、悲劇の始まりは三者でばらけていた出向先の持ち分があれよあれよという形で、私の派遣元の商社がマジョリティを持つことになったことです。つまり、「商社マンよ、経営せよ!」という状態になりました。ですが「餅は餅屋」=「餅屋じゃない人に餅を創らせてもダメ」、つまり経営をすることが出来ないのが商社マン、出向先で最若手だった私は「経営が出来ない」商社マン諸先輩方の姿を見て「このまま商社にいたらわたしゃ詰むバイっ!経営学ばなっ!」と思ったのが、長くなりましたが経営者を志しはじめた直接のきっかけです。一応まだ20代だったはずです(遠い目)。
長めの話になりそうなので、PART1はここで切って、続きはPART2に任せようと思います。