今回はユルめの記事を書きます。ユル目=いろいろな人に読んで欲しい、つまりボーダーがユル目、という意味です。このネタを考案した際は20代~30代前半向けかと思ってましたが、最近商社時代のパイセン(50歳間近で今だ商社勤務)から「転職したいんだわ・・・」と相談を持ち掛けられて、「1度目の転職は35歳まで」と言われていた時代が久しく感じられ、遠い目ってこうやってやるんだなぁ~、と思いました。
タイトルから転職礼賛系の記事かと思われるのも致し方ないのですが、転職にももちろん「成功者バイアス」(*)というものはありますことDisclaimerとして述べさせて頂きます。もちろん「人生ハードモードやん・・・」的な感じになる転職もあります。私もそんな転職も実は経験していますし、友人知人にもハードモード転職を経験している例も多数です。独裁者経営者、会社が倒産(寸前)、給与未払いなんかの例かその足し算が多数を占めます。
でも、転職でハードモードを経験したとしても、人生の「経験値」は上がります。その職場での「成功」は無かったとしてもそれを経ての「成長」はあるはず。特に「転職して直後の新たな順応を行っていくフェーズ」というのは特に成長曲線が爆上がりフェーズなのです。というわけで、この記事は実は「転職礼賛」というより、「成長曲線爆上がり礼賛」ですかね(笑) ともあれ、ご覧ください。
*成功者が高らかに自分の成功の理由を語る一方で、同じことをしたとしても多くのサイレントな失敗の実例は沢山ある、というもの:「絶対失敗しない、新築ワン〇ーム不動産投資で楽々アーリーリタイア」的な謳い文句の本などで自分の成功の実例を語る著者がいる一方で、同じ事をした方(それも多数)がたくさんいるがあまり脚光を浴びない事。
目次-Table of Contents
転職とは「新たな文脈」へのダイブ
自分の「コンフォートゾーン」から抜け出すこと
ここでの「コンフォートゾーン」とは「慣れ親しんだ環境」ということです。転職前の職場の「新卒入社からはや○○年、人も組織も慣れ親しんで、勝手知ったる我が会社」という感じですね。人間、恒常性=ホメオスタシスが働く性(さが)があるので、この「勝手知ったる」というのはかなりの誘惑、抜け出しがたいものがあります。そして、転職というのは「勝手を知らない職場」へJOINすることに他なりません。しかし、2つの職場を経験することは「コンフォートゾーン」が「AからBへとすり替わる」というのではなく、最低でも「A+B」にはなるし、きちんとした姿勢と意識で挑めば「AxB」にさえなってくれます。つまり、転職は自分の「コンフォートゾーン」を引き上げてくれる行為なのです。で、このコンフォートゾーンが「A」、つまり1つであることと、「A+B」つまり2つになることの違いは何かというと、簡単に言うと「順応できる環境が増える」ということなんです。ダーウィンの進化論、「Survival of the fittest」という理論に例えると、「Fit出来る=Survive出来る(可能性のある)環境が増える」ということで、1社しか知らない=その会社でしかSurvive出来ない(その他は未知数)という人よりも、少なくとも2社で何とかこなせるという人は少なくとも2社でSurvive出来ることが分かった人、となるわけです。実際には「A+B」に留まることなく、「A+B」~「AxB」の間のどこかで収まり、つまり2以上の値になります。これは何かというと簡単に言うと「ビジネス戦闘力」が高まる、ということなんですね。
なぜ「コンフォートゾーン」が引き上がるのか?
なぜ「コンフォートゾーン」が引き上がるかというと、それは新たな職場が「勝手を知らない職場」であるが故です。いかに同じ業界だったり同じ日本語という言語を使っていたり、企業の規模が似通っていたとしても、各社に異なった「企業文化」とそれを基に作られる「社内常識」や「社内プロセス」というものがあります。初めての転職をA社からB社にした場合、これまではA社の「企業文化」「社内常識」「社内プロセス」しか知らない中で、B社におけるそれら項目は必ずや異なっています。それらの「異なるもの」に最初は違和感を覚え、揺さぶられ、時にはミスをしつつ、慣れていきます。その意味ではB社での当初の数か月間は「コンフォートゾーン」ではない「アンコンフォアタブル=快適でない」状態となります。新たな「コンフォートゾーン」を作るには、「Uncomfortable 」なものを「Confortable」にしていくプロセスが必要なんですね。それを経て、A社とB社の両方の経験が血肉となります。さて、この方がC社に転職したとしましょう。この人は前のパートで述べた「A+Bの環境に適応できた人=Survive出来た人」になっています。その人がB社に転職した際の順応に3か月要したとすると、C社の時はそれよりかなり短く、1か月くらいで順応が完了する筈です。なぜか?簡単に言うと「環境適応能力=Survival能力=ビジネス戦闘力」が高まっているからです。既にB社に転職した際にA社とは異なる「企業文化」であったことを経験しており、それに違和感を覚え、揺さぶられた経験があるからです。つまり、転職をすることによって新たな環境に対する順応度は格段に高くなります「コンフォートゾーン」的にA社にいた際は「この勝手知ったる我が会社、抜け出したくない!」なんて思っていたのが、C社に転職する頃には「次の新しい環境、どんと来いや!Value出したる!」くらいのアドレナリンジャンキー具合になっているわけです。
RPGの「転職」って的を射てますね
上記で、転職の際の新しい環境にUncomfortable 感を覚え、揺さぶられ、時にはミスをしつつ、慣れていく、それに伴い「ビジネス戦闘力」は上がっていくと述べました。そうです、やはり最初は慣れない環境では多少なりともパフォーマンスが落ちるんです。その理由はこれまで慣れた環境の中で脳内自動化が出来ていたことを「新たに意識をしながら取り組む、覚える」というのが必要で、パフォーマンスに貢献する行為に集中できないからなんですね。良くあるRPGビデオゲームで神殿やら教会やらで「転職」するとこれまで積み上げてきたレベルが一旦レベル1にリセットされるのと似ていますね。やっぱり新たな「仕事」「職場」は順応の期間はパフォーマンス落ちるんです。経験=Occasionを経ていくにつれて順応力=ビジネス戦闘力が高まるので、パフォーマンスの落ちる程度、期間はより小さく、短くなりますが。なお、同じ業界、仕事の狭義の意味で言う「転社」の場合より、仕事そのものを変えてしまうような「転職」(例えば営業からプログラマーへ、みたいな)の場合はその職業自体のご作法も新たに学ばないといけないので、全く異なる業界、職能を始めるという狭義の「転職」の方が「レベル1感」はより強いかもしれません。
(備忘:広義の「転職」におけるどんな場合において「何を変えて、何を変えないべきか」については別記事をいつか書きたいと思っています)
上記のように、慣れ親しんだ環境から離れて新たな文脈へダイブするという「転職」という行為、「環境適応能力を上げ、Survival能力を上げ、ビジネス戦闘力を上げる」と申しました。次章ではこの中の「ビジネス戦闘力」がなぜ上がるのか、について深掘りしていければと思います。
転職でなぜ「ビジネス戦闘力」があがるのか?
新しいステージで「求められているモノ」を把握する力が付く
上述した通り、転職した直後の環境というのは、「Uncomfortable」なものです。それをだんだんと「Comfortable」にしていき、それで「Comfort Zone」が出来上がるというわけです。「Uncomfortable」なものの例として、「初めて入るラーメン屋」のAnalogyが使えるかと思います。
初めて入るラーメン屋は、以下の部分が判らないものへのDiveとなります。
1.支払いの仕方:食券制なのか、オーダー後払い式なのか、現金以外も使えるのか?
2.着席の仕方:店員さんの指示に従うのか、事由に席を選んでいいのか?
3.その他ローカルルール:「ナントカマシマシ」みたいな謎呪文があったり、食事中は携帯電話禁止だったり、食べた後のどんぶりはカウンターに返したりとかとかetc
といった要素が初めて入る店では判らない事で、「あれ、どうすればいいんだっけ?」と戸惑うわけです。でも、このお店に3,4回くらい来た頃にはこれらは全て大体わかって、このお店は「Comfort Zone」になっていることでしょう。
これは、「ラーメン屋」というある程度様式が似ている業態であることと、それが我々日本人の中ではある程度「こんなものだよね」的に判るから、というのもあります。
これが訳の分からん出自のなんじゃもんじゃ料理だったり、店員さんが自分の理解できない言語を使っていたりすると「おお、これはUncomfortableだぜ!」となり、自分の「Confort Zone」からの距離が遠くなります。新しい転職先がこういう自分の「Confort Zone」から遠い場合、順応には近い場合よりも時間が掛かる事でしょう。この「Confort Zone」からの近さ、遠さを規定する項目として、入社前から判ることとして、「業界」「使用言語」「ロケーション」などがあり、入社してからでないと判らないこととして、「企業文化」「人間関係・人間模様」などがあります。それらを意識、聞くことを恐れないマインド、嗅覚などを駆使して「求められているモノ」を把握し、順応していくわけです。この順応のプロセスも、その為に駆使する「意識、マインド、嗅覚」もビジネス戦闘力の増強になります。
改めて分かる自分の「武器」
「求められているモノ」が転職前と転職先では何らかの形で異なるということは説明しました。この「違い」がUncomfortable状態を生んでいるわけですが、第一ステージで「求められているモノ」の「把握・理解」が出来たらその次のステップは「求めに応える事」です。この「応える」という作業は自分が持ちうる能力で対応することとなります。「能力」はいろいろな定義があるものですが、判りやすいものとして
(A) 自分が持ち、運用できる知識・職能=Hard Skill(例:会計知識)のレベルと幅が真っ先に上がりますが、それ以外にも
(B)対人関係構築だったり、チームワークを構築する能力=Soft Skill/Interpersonal Skillと呼ばれるもの、
(C)マインドセット・性格、
(D)世の中に対する認識やバイアス
など、非常にパーソナルなものを含め、「自分の持つべきもの全て」で応える必要があります。それを試してみて、前職で通用して、転職先でも通用するものは「自分の武器」となる事でしょう。
「求められていること」に対するセルフリソースの構築・発見
会社が違えばカルチャーが違い、カルチャーが違えば求められているモノの比重が違う。
「前職では(A) のHard Skillを前面に押し出せばよかったが、新しい職場はより(B)の人とうまくやっていく能力が大事になってくるんだな。(A)はさらにブラッシュアップし続けつつ、(B)を新たな武器として築いていこう」などと考える事で新たな力を身に付けることとなります。また、実はその能力があったのだけれども自分でも知らなかったリソースを「発見」する場合もあります。私の例ですが、以前アプリ開発の要件定義、Project Managementを初めて行った時の経験です。私はプログラム言語も書けませんし、アプリ開発も未経験でしたが、「こういう時にどういう機能が必要か?」「次のステップはどうなるか?」という「分岐するシナリオ(What if)をMECEで網羅的に考え、それぞれの場合においての対応策・対応すべき機能を考える事」、非常に単純に言うと「きちんと考えること」が出来ればこの仕事はこなせると悟りました。このように自分が今まで培ってきたことが他の分野にも応用できるTransferrable Skillであることが判る機会、それが転職で訪れる事があります。
まとめ、というか編集後記
「転職」は採用されて終わりでなく、転職することでこうしたSurvival of the fittest=ビジネス戦闘力が上がってこそだと思います。冒頭に「成功者バイアス」について述べましたが、今回の記事を書きながらやっぱり「転職のダウンサイド」も書かないとフェアではないなと思いました。また、「能力に対する考察」に関する記事も別で書きたいという思いが芽生えてきました。上記の(A)~(D)のカテゴライズもまだ煮詰まり切れてない気がします。圧力鍋で煮まくって、その上で一晩寝かせたカレーが好きな私にとっては煮詰まり感がまだ序の口、というかぬるま湯です。今後の記事を楽しみにしていてくださると嬉しいです。では。